大会実行委員長挨拶

第114回日本獣医循環器学会の開催にあたって

 

 早春の候,会員の皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
この度,日本獣医循環器学会の春季定例大会(日本獣医画像診断学会との共同開催)を開催するにあたり,ご挨拶を申し上げます。
 昨年の春頃から始まった新型コロナウィルスの猛威は今も続き,多くの学会,研究会ならびに講習会が開催されず,また皆様におかれましても日々,不安,緊張とご不便な生活を送られていることとお察しします。日本獣医循環器学会においても,昨年6月に予定していた春季合同学会の中止に続き,8月に予定していた単独開催の認定医講習会も延期することとなりました。日々進歩し続ける獣医学ですが,学問としては未だ発展途上にありますので,学会で意見交換が出来ないことはフラストレーションであり,学問の停滞を感じる方もおられるのではないかと拝察します。一方,奇しくも在宅時間が増加することで,動物の飼育数は増加し,また疾患の存在にいち早く気付くことで来院される機会が増加しているように思います。そのような状況下で,日々の診療に疑問を持たれる機会も多いのではないでしょうか。コロナ禍によりオンラインやオンデマンドなど,画面を通した情報の提供は火急に普及していますが,一方通行となりがちであり,日々蓄積する疑問の氷解には至らないこともあろうかと思います。コロナ禍から1年が経ち,多くの学会が対面での学会再開を模索していることは,オンライン疲れだけではなく,学会を学会たらしめるものがなにかを暗喩しているように思います。
 本学会は,他学会に先駆けて,昨年11月から対面での認定医講習会を再開致しました。感染拡大を助長するようなことはあってはならないため,参加者の体温確認,手指消毒,ソーシャルディスタンスと換気の徹底を行い,さらに参加者の方々のご理解もあり,幸いにも無事に開催することが出来ました。その後の第113回秋季大会は札幌開催の予定でしたが,移動の制限等から会場こそ都内に変更となったものの,11月のノウハウを活かし,対面とオンデマンドの併用で認定医講習会と教育講演の両方を成功裏に収めることが出来ました。そして今回,前2回の対面開催における経験を活かし,会員の皆さまの貴重な症例を共有すべく,一般講演を開催する運びとなりました。
 学会が開催される7月は,新型コロナウィルスに対する知見の蓄積とワクチン接種の両輪により,今よりも光明が差し,わずかでも以前のような生活に近づきつつあるものと予想します。新しい日常への転換は必要ではありますが,獣医学が公衆衛生を含む学問である以上,コロナ禍においても感染症を正しく恐れた上で,活発な議論を行える場を用意することが出来たことを大変嬉しく思います。学び方や学ぶツールは多様化しましたが,学会での交流は学問の原動力となります。会員の皆様と共に,持続可能な学問の探求を模索出来れば幸いです。
 最後に,本学会を開催するに当たり協力を頂きました学会関係者をはじめ,会場確保が困難な時期に,複数回にわたり場所を提供くださいました東京農工大学に厚く御礼を申し上げます。
 本学会が,会員の皆様にとって有意義で思い出深いものとなりますことを祈念し,ご挨拶とさせて頂きます。

第114回日本獣医循環器学会大会長 青木卓磨